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SAF(持続可能な航空燃料)は出張者にとって、「罪悪感のない」フライトとなるか?

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出張者にとって持続可能性はますます重要になってきています。
多くの人は、より環境に優しい選択肢があれば航空会社を変更したり、別の交通手段を利用することを望んでいます。OAG社の報告によると、全旅行者の56%(ミレニアル世代では68%に上昇)、出張者の50%が、より環境に配慮した代替手段への変更を検討しています。

「これは航空業界が市場の変化に対応するため、持続可能な燃料源を見つけなければならないという重圧にさらされていること、そして変化の必要性を認識していることを浮き彫りにしています。」
Justin Penny, Head of Aviation Europe, Flight Centre Travel Group

国際民間航空機関(ICAO)によると、持続可能な航空燃料(SAF)は、炭素排出量を削減するための最良の選択肢であり、2050年までにネットゼロにするという航空業界の目標を達成するための最短の方法です。

SAF(持続可能な航空燃料)とは?

    SAFは、化石燃料よりもはるかにクリーンに燃焼し、有害な温室効果ガスの排出を75%削減する航空燃料です。また、粒子状物質や硫黄などの有害な排出物もそれぞれ90%、100%削減します。
    SAFは持続可能な資源から作られており、化石ジェット燃料と混合することで、航空機やインフラを変更することなく排出量を削減することができます。

    国際航空運送協会(IATA)の報告によると、SAFは世界中で45万便以上のフライトに使用されており、現在45社以上の航空会社が使用しています。しかし、SAFはまだ広く普及しておらず、航空燃料市場の0.1%に留まっています。

    持続可能な燃料に対する世界的な需要の高まりに対応するため、IATAは各国政府にSAFの優遇措置を導入するよう求めています。最近の政策発表はこの前提を裏付けるものであり、数カ国がSAF使用に関する税制優遇措置や最新情報を発表してます:

    • 2022年7月、イギリス政府は2030年までに航空燃料の少なくとも10%をSAFとする義務化を発表し、今後3年以内にSAF施設を5カ所建設する計画です。
    • オーストラリア政府は、2050年までにカーボンニュートラルで世界をリードする航空部門を発展させる計画を発表し、BP社のKwinana製油所は原料からSAFを生産するために改造されます。
    • アメリカでは8月にインフレ抑制法が成立し、SAFに新たな税額控除が設定されました。
    • シンガポール民間航空庁(CAAS)、シンガポール航空(SIA)、Temasek社は、企業がSAFクレジットを購入し、航空旅行に伴う二酸化炭素排出量を相殺できるプログラムを発表しました。
    Single Plane Ariel View

    SAFへの需要喚起という課題

    「航空会社に対する投資圧力が高まるにつれ、通常のジェット燃料に比べてコストの高いSAFが、航空運賃の値上げという形で乗客に転嫁されるリスクがあります」とJustinは言います。

    これに対抗するため、IATAの目標は、産業界と政策関係者の協力関係を促進し、SAFの商業化に必要な枠組みを作るための政策支援を提供することです。これにより、競争力のあるSAF市場の実現に向けた障害を取り除くことができると考えられています。

    問題は、SAFがまだジェット燃料よりかなり高価だということです。
    しかし、消費者の嗜好が変化するにつれて、航空会社は排出量目標を達成し目的地の規制を遵守する方法として、SAFをより真剣に受け止めています。

    スカンジナビア航空、ルフトハンザ航空、カンタス航空、アラスカ航空、ユナイテッド航空はすでにSAFを民間便に使用しています。また、アメリカン航空とカタール航空は、ネット・ゼロ・エミッションを達成するという野心表明に署名しました。

    こうした取り組みは需要を牽引し、その結果Shell社は2月、シンガポールで航空会社向けにSAFを供給する最初のサプライヤーになったと発表しています。同社は、2025年までに世界全体で年間約200万トンのSAFの生産に取り組む予定です。

    SAFにおけるTMC(旅行管理会社)の役割

    「TMCにも果たすべき役割があります。SAFの需要を促進するだけでなく、顧客が社内の持続可能性目標を達成することを支援することもできます」とJustinは言います。

    前進的な一歩としては、法人契約を結ぶ企業へと持続可能な航空燃料の利用プログラムを促進して増加させることです。これは、出張の一部で持続可能な燃料を使用することを保証するもので、基本的にはSAFを代理購入します。

    彼は、これが究極の答えではないと言います。
    「SAFを販売する航空会社は限られており、生産上の問題からも世界中で入手できるSAFの量はごくわずかです。企業として、航空会社からSAFを大量に購入しても、旅行者がSAFを使用している航空機に搭乗することが保証されるわけではないのです。購入したSAFは、航空会社全体の燃料消費に貢献するだけであり、多くの企業にとって、それは受け入れがたいことです」
    と、続けます。

    「FCMは航空会社と協力し、SAFのような問題を含め、航空会社の持続可能性プログラムについての議論と、その後のプログラム採用を促進することで解決策を模索しています。現在は業界標準がないため、非常に複雑です。IATAへ注目が集めっている現在の状況はこの課題の解決を後押しすると思われます。FCMは、IATAとSAFプログラムに取り組む関係を持っています。最終的には、航空会社と企業間の議論を促進し、テクノロジーやデータと連携することで、誰もが持続可能性目標を達成できるよう支援することができます。」

    この分野においてはテクノロジーがその真価を発揮します。FCMのプラットフォームとブラウザの拡張技術では、ホテルの持続可能性認証、炭素排出情報、炭素計算機、持続可能性に関するメッセージや規定に沿った予約の促進、カーボンオフセットプログラムに関する情報などを検索結果に表示するなど、旅行者に持続可能性に関する情報を提供する機能を開発してます。

    このような取り組みは、先進的な出張パートナーを探している企業にとって魅力的です。Shell社は2022年に、全事業部門の出張ニーズを管理するグローバル出張プロバイダーとしてFCMを選択したと発表しています。

    「将来を見据えたとき、航空業界が長期的な持続可能性を確保するために行動を起こさなければならないことは明らかです。私たちは、航空会社とそのお客様を互いの持続可能性への取り組みでつなぐことで、このプロセスにおいて重要な役割を果たすことができます。そうすることで、すべての人が環境に与える影響を軽減することができるのです」
    とJustinは締めくくります。

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    テクノロジーやソリューションは日々進化します。これからの出張はデジタル化や可視化を強化し、分析を通して新しいステップへ進むための方法が必要です。今までの慣習や方法から解き放たれ、新たな出張ソリューションについて考えてみませんか。